東京マラソン2026が3月1日、東京都庁前をスタートし、東京駅前の行幸通りをフィニッシュ地点とする42.195㎞のコースで行われ、男子は昨年の優勝者、T・タケレ(エチオピア)が2時間3分37秒で制し、2連覇を果たした。昨年6位のG・トロイティチ(ケニア)が同タイムの2位、1秒差の3位にNDソフトに籍を置くA・ムティソ(ケニア)が飛び込む大激戦だった。
パリオリンピックケニア代表のD・マティコがタケレから6秒差の4位に続き、2017年ロンドン世界陸上の5000mでM・ファラー(イギリス)の4連覇を阻止したM・エドリス(エチオピア)が2時間4分7秒で5位、昨年の東京世界陸上のマラソンで銅メダルを獲得したI・アオアニ(イタリア)が2時間4分26秒のナショナルレコードで6位、東京オリンピック10000m金メダリストのS・バレガ(エチオピア)が2時間5分0秒で7位、昨年3位で元YKKのV・K・ゲティッチ(ケニア)は2時間5分21秒で9位だった。
注目を集めた大迫傑(LI-NING)と鈴木健吾(神奈川陸協)の新旧日本記録保持者対決は2時間5分59秒で12位となった大迫に軍配、鈴木は2時間6分9秒で日本人選手2番手の13位でMGC出場権を獲得した。
鈴木に加え、2時間6分58秒で15位の市山翼(サンベルクス)、2時間7分6秒で17位に入った東京世界陸上マラソン代表、近藤亮太(三菱重工)、初マラソンで2時間7分34秒をマークし20位の工藤慎作(早稲田大)、2時間8分49秒で26位の藤村共広(スズキ)が今大会でMGC出場権を掴み取った。
また、大迫を1秒抑え、豊配友が中国の選手として初の2時間5分台となる2時間5分58秒のナショナルレコードで11位に入っている。

女子は元世界記録保持者のB・コスゲイ(ケニア)が2時間14分29秒の大会新記録で優勝、日本勢の最先着は細田あい(エディオン)、2時間23分39秒の10位で現役ラストレースを終えた。
日本人選手2番手の吉川侑美(キャノン九州AC)は2時間27分21秒で規定に21秒届かず、今大会でのMGC出場権獲得はならなかった。
スタート前から大迫傑と鈴木健吾の新旧日本記録保持者の直接対決に耳目が集まった今大会、蓋を開けてみればレース前半に主役の座を奪ったのは、ダークホースの橋本龍一(プレス工業)だった。
橋本は昨年の大阪マラソンでも先頭集団に加わり、30㎞過ぎの折り返し地点では先頭に立つ果敢なレースを見せていたが、この日もタケレら実績のある優勝候補の海外招待選手が「風があった」と自重をするなか、1㎞2分53秒~54秒に設定された第1ペースメーカーを10㎞まで担当する中村大聖(ヤクルト)にただ一人付いて行き、集団から飛び出す恰好となった。
プレス工業の橋本龍一がただ一人第1ペーサーの設定ペースに挑み、前半の主役に

ペースメーカーの中村は5㎞を14分34秒、10㎞を29分02秒と与えられた役割を全うしてコースを後にしたが、タケレの他、ムティソ、ゲティッチ、バレガ、アオアニら2位集団の10㎞通過は29分28秒とペースを抑えたままで、中村以外の第1ペーサーは海外有力選手のペースに合わせていたため、トップの橋本が単独走となる、1週間前に、吉田響(サンベルクス)がトップを独走した大阪マラソンをなぞるような展開となり、また5㎞地点では第1ペーサーの集団のペースが上がらなかったため、一つの大集団のようになっていた第2ペーサーの集団は29分41秒で10㎞を通過、大迫傑、鈴木健吾らはこの位置から、昨年の大会で日本人選手最先着を果たした市山翼は1㎞3分ペースの集団からレースを進めていた。
ペースメーカーのフォローのない単独走となった橋本の15㎞の通過は43分25秒、この間の5㎞のスプリットを14分23秒でカバーしてそれまでのペースを維持、2位集団との差を43秒に拡げ、20㎞の通過は58分18秒、5㎞のスプリットが14分53秒とややペースを落としたものの、中間点を前週の大阪マラソンでの吉田響より速い1時間1分29秒、25㎞は1時間13分8秒でこの5㎞が14分50秒の通過と1㎞3分を切るペースを維持して頑張っていたが、この間、ようやくエンジンが温まりペースの上がってきた2位集団との差は12秒と一気に詰まっていた。こうなってくると25㎞以降、疲れの見え始めた橋本と、流れに乗り始めた2位集団との勢いの差は顕著で、橋本の独走は27㎞で終焉を迎えた。
タケレが二連覇、新旧日本記録保持者の対決は大迫に軍配も・・・
ここにおいて初めて2位集団を返上した第1ペーサーの集団の30㎞通過は1時間28分2秒、この地点でペースメーカーがレースを離れて第2ラウンドが始まった一方で大迫、鈴木の他、東京世界陸上代表の近藤亮太、昨年の東京マラソンでは第1ペーサーのグループで勝負した太田蒼生(GMOインターネットグループ)、ワールドユニバーシティゲームズハーフマラソン金メダリストの工藤慎作の日本勢と、ケニア人実業団選手のR・キムニャン(ロジスティード)、オレゴン世界陸上の男子マラソンで4位となったカナダのレビンス、昨年の東京マラソンで2時間5分57秒をマークしたスウェーデンのハッサン、自己ベストは2時間7分6秒、2023年の福岡国際マラソンで2時間8分6秒の6位に入っている中国の豊配友ら第2ペーサーに付いたグループは、ペースを落としている橋本を捉え切れないまま、30㎞を1時間29分19秒で通過した。
第2ペーサーの集団からペースメーカーが離脱すると、スペシャルの給水を利用して豊配友が抜け出し、しばらくして鈴木も後を追い始めると吊られるようにペースの上がった第2集団から、太田が遅れ始めた。
豊配友が32㎞のゼネラルテーブル付近で橋本を捉えると、続いて鈴木も橋本を抜き、日本人選手単独トップに浮上したが、ここから鈴木は背後に付けていた豊配友に再び突き放されると、34㎞地点で大迫、近藤らの集団に吸収され、日本人トップ争いは仕切り直しとなった。

タケレ、バレガ、エドリス、トゥラのエチオピア勢4人、ムティソ、トロイティチ、マティコ、ゲティッチの4人のケニア勢にイタリアのアオアニが加わる9人の先頭集団は35㎞を1時間42分57秒で通過すると、バレガ、トゥラ、ゲティッチが次々に篩い落とされ、37㎞の田町の折り返しを前にエドリスと、ここまで善戦をしていたアオアニも脱落、優勝争いはタケレ、トロイティチ、ムティソ、マティコの4人に絞られた。
その後方の日本人選手の先頭を争う集団は35㎞を1時間44分20秒で通過すると、大迫傑が満を持していたかのようにペースを上げ、健闘していた工藤慎作がまず遅れ始めた。
最後の折り返し前には近藤も付くことが出来なくなり、折り返し以降はハッサン、キムニャン、レビンスが遅れ、25㎞過ぎまで第1集団に加わっていたエチオピアのタムルを吸収した大迫、鈴木は3人態勢で前を行く豊配友を追った。
優勝争いは40㎞を過ぎてもなお4人による競り合いが続いたが、残り1㎞を切ってマティコが脱落、残り200mからのスプリント勝負を制したタケレが2時間3分37秒で優勝を果たし前年の大会に続く二連覇を飾った。
トロイティチが同タイムの2位、ムティソが1秒差の3位と激戦だったが、ラストスプリントはマラソン転向前、東京オリンピックの3000m障害で8位に入賞しているタケレに一日の長があった。

大迫傑は40㎞以降、鈴木健吾を突放して2時間5分59秒で12位、最後の2.195㎞を6分30秒でまとめて前を行く中国の豊配友を猛追したが1秒届かず、フィニッシュ後には倒れ込み、動くことの出来なかった豊配友に近付くと屈みこんで背中に手を添え、一言二言何か言葉を掛け、健闘を称えた。
鈴木健吾は大迫と10秒差の2時間6分9秒の13位、カナダのレビンスを挟み、第3集団からレースを進め、レース終盤にペースを落とした選手を次々にかわしていた市山翼が2時間6分58秒で15位、残り5㎞で日本人トップ争いから脱落した近藤が2時間7分6秒で16位、初マラソンの工藤慎作が2時間7分34秒で日本人選手5番手の20位、そして市山と同じ集団でレースを進めていた藤村共広が終盤粘って2時間8分49秒の日本人選手6番手に入り、MGC出場権を獲得、35㎞手前まで日本人トップ集団に加わっていた太田蒼生は2時間10分7秒でフィニッシュした。
レース前半に果敢な走りで主役となった橋本龍一は、終盤にペースを落として2時間11分21秒でレースを終えたが、世界のレベルに挑むという、自身がここで何を目標として、どう走らなければならないのかをはっきりさせ、躊躇うことなく実践したその姿勢はほかの選手に見られなかったもので、結果を問わず賞賛に値するものだった。
豊配友、中国新記録の衝撃

このレースにおける最大のサプライズは、豊配友が2時間5分58秒の中国新記録で大迫傑、鈴木健吾に先着を果たした事で、レース前、新旧日本記録保持者二人の久々の直接対決が実現することで高まっていた期待感が、フィニッシュ後には吹き飛んでしまった。
もちろん、フィニッシュ後に倒れ込み、起き上がれなくなるまで追い込んだ豊配友を称えるべきではある。
しかしながら、大迫は日本記録を更新したバレンシアマラソンから3か月後のレース、鈴木は長く在籍した富士通を離れ、ロサンゼルスオリンピックへ向けてプロランナーとして新たなスタートを切って迎える最初のフルマラソンと、それぞれに先を見据えた上での今回の東京マラソンだったとは言え、中国の男子長距離界にとっては、日本を代表するランナーを1秒とはいえ上回ってフィニッシュを果たした事は歴史的快挙と捉えられるであろうし、日本の男子長距離陣にとっては、長きに渡って眠れる虎と言われていた中国勢の近年の急成長は、現実的な脅威と受け止めなければならないだろう。
東京世界陸上で3位となったイタリアのアオアニが日本記録を上回る2時間4分26秒をマークしており、この1年間で新たに5分台に突入した選手の出なかった日本の男子長距離界は、大迫の日本新があったとは言えこの点ではやや停滞が感じられ、2時間6分台を記録する選手は増えたが、ケニア、エチオピア勢以外にも4分台を出す選手が増えてきている世界のマラソンの潮流に乗るには至らず、また今秋に名古屋で行われるアジア大会も決して楽観視のできない厳しい現実が突き付けられた2026年の東京マラソンだった。
文/芝 笑翔
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3月1日
東京マラソン
男子上位50名
1)T・タケレ(エチオピア)2:03:37
2)G・トロイティチ(ケニア)2:03:37
3)A・ムティソ(ケニア/NDソフト)2:03:38
4)D・マティコ(ケニア)2:03:44
5)M・エドリス(エチオピア)2:04:07
6)I・アオアニ(イタリア)2:04:26
7)S・バレガ(エチオピア)2:05:00
8)S・トゥラ(エチオピア)2:05:02
9)V・K・ゲティッチ(ケニア)2:05:21
10)S・タムル(エチオピア)2:05:56
11)豊配友(中国)2:05:58
12)大迫 傑(LI-NING)2:05:59
13)鈴木健吾(神奈川陸協)2:06:09※MGC出場権獲得
14)C・レビンス(カナダ)2:06:49
15)市山 翼(サンベルクス)2:06:58※MGC出場権獲得
16)V・ライモイ(ケニア/スズキ)2:06:59
17)近藤亮太(三菱重工)2:07:06※MGC出場権獲得
18)S・ハッサン(スウェーデン)2:07:22
19)A・ワイス(ジブチ)2:07:24
20)工藤慎作(早稲田大)2:07:34※MGC出場権獲得
21)R・キムニャン(ケニア/ロジスティード)2:07:36
22)D・ウォルデ(エチオピア)2:07:58
23)B・キプコエチ(ケニア)2:08:20
24)C・クリンガー(アメリカ)2:08:43
25)A・デグ(エチオピア)2:08:43
26)藤村共広(スズキ)2:08:49※MGC出場権獲得
27)S・カリウキ(ケニア/戸上電機製作所)2:08:58
28)F・M・クルイ(ケニア)2:09:13
29)田中秀幸(トヨタ自動車)2:09:19
30)荒生実慧(NDソフト)2:09:59
31)太田蒼生(GMOインターネットグループ)2:10:07
32)塩澤稀夕(富士通)2:10:09
33)竹内竜真(NDソフト)2:10:18
34)熊橋弘将(山陽特殊製鋼)2:10:31
35)富村太悟(ジーケーライン)2:10:38
36)宮川慎太郎(警視庁)2:10:45
37)下條乃將(NDソフト)2:10:59
38)管油勝(中国)2:11:09
39)橋本龍一(プレス工業)2:11:21
40)原田大希(群馬ユナイテッドAC)2:11:25
41)小森稜太(NTN)2:11:37
42)W・デレセ(エチオピア/ひらまつ病院)2:11:37
43)大田和一斗(栃木陸協)2:11:56
44)河村 悠(自衛隊体育学校)2:12:15
45)S・ダブラトフ(ウズベキスタン)2:12:27
46)福田裕大(石川陸協)2:12:34
47)高久 龍(ヤクルト)2:12:52
48)N・ベンジャミン(米沢市陸協)2:13:21
49)A・ゼル(アメリカ)2:13:22
50)畝 歩夢(埼玉医科大グループ)2:13:33
51位以降の主な選手
52)片西 景(JR東日本)2:14:00、57)吉岡龍一(Honda栃木)2:14:31、59)奈良凌介(ヤクルト)2:14:41、62)高田康暉(住友電工)2:14:51、69)加井虎造(スズキ)2:15:12、80)西田壮志(トヨタ自動車)2:16:31、83)一色恭志(NTT西日本)2:17:09、85)柴田拓真(小森コーポレーション)2:17:21、86)大津顕杜(中央発條)2:17:29、95)安井雄一(愛知陸協)2:18:38、119)福田 穣(JM Running Club)2:22:11、139)島田晃希(帝京大)2:24:00、165)森井勇磨(京都陸協)2:26:33、257)小椋裕介(ヤクルト)2:32:27
東京マラソン2026
女子上位20名
1)B・コスゲイ(ケニア)2:14:29※大会新
2)B・ウェルデ(エチオピア)2:16:36
3)H・フェイサ(エチオピア)2:17:39
4)S・A・ケベデ(エチオピア)2:17:39
5)M・アレム(エチオピア)2:18:50
6)V・チェプトゥー(ケニア)2:19:05
7)M・フィキル(エチオピア)2:20:00
8)A・アヤナ(エチオピア)2:20:30
9)P・ジェプコスゲイ(ケニア)2:21:39
10)細田あい(エディオン)2:23:39
11)R・ワンジル(ケニア)2:24:47
12)路穎(中国)2:26:35
13)李芷萱(中国)2:26:53
14)𠮷川侑美(キャノン九州AC)2:27:21
15)K・E・インゲセット(ノルウェー)2:28:57
16)夏雨雨(中国)2:29:14
17)森智香子(積水化学)2:29:22
18)加賀屋智里(東京メトロ)2:29:30
19)S・ダイバー(オーストラリア)2:29:57
20)劉敏(中国)2:30:03
21位以降の主な選手
21)永友優雅(メモリード)2:30:03、22)唐沢ゆり(クラフティア)2:30:29、23)下山田絢香(TTランナーズ)2:32:09、25)和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント)2:32:45、30)澤畠朋美(埼玉陸協)2:37:11、33)嶋田早紀(十勝陸協)2:37:35、35)堀尾和帆(ルートインホテルズ)2:40:09、52)真柄 碧(福井陸協)2:44:21
東京マラソン2026
男子車いすマラソン上位8名
1)M・フグ(スイス)1:21:09
2)羅興伝(中国)1:28:08
3)渡辺 勝(TOPPAN)1:33:10
4)S・リゾ(オーストラリア)1:33:12
5)G・スヒッパー(オランダ)1:33:12
6)西田宗城(バカラパシフィック)1:33:19
7)岸澤宏樹(日立ソリューションズ)1:36:15
8)洞ノ上浩太(LINEヤフー)1:36:16
女子車いすマラソン上位8名
1)C・デブルナー(スイス)1:37:15
2)E・レインボー クーパー(イギリス)1:41:13
3)周召倩(中国)1:41:13
4)T・マクファーデン(アメリカ)1:41:15
5)V・デ ソウザ(ブラジル)1:41:20
6)土田和歌子(ウィルレイズ)1:41:20
7)仲嶺 翼(テス・エンジニアリング)1:41:20
8)M・シャー(スイス)1:42:17
男子初マラソン歴代記録
1)近藤亮太(三菱重工)2:05:39
2)黒田朝日(青山学院大)2:06:05
3)若林宏樹(青山学院大)2:06:07
4)平林清澄(國學院大)2:06:18
5)西山和弥(トヨタ自動車)2:06:45
6)合田 諒(安川電機)2:06:51
7)池田耀平(花王)2:06:53
8)星 岳 (コニカミノルタ)2:07:31
9)工藤慎作(早稲田大)2:07:34←NEW!
10)作田将希(JR東日本)2:07:42
男子マラソン日本人学生歴代10傑
1)黒田朝日(青山学院大)2:06:05
2)若林宏樹(青山学院大)2:06:07
3)平林清澄(國學院大)2:06:18
4)工藤慎作(早稲田大)2:07:34←NEW!
5)横田俊吾(青山学院大)2:07:47
6)溜池一太(中央大)2:07:59
7)柏 優吾(東洋大)2:08:11
8)藤原正和(中央大)2:08:12
9)吉田祐也(青山学院大)2:08:30
10)白石光星(青山学院大)2:08:42