織田幹雄記念国際陸上競技大会が4月29日、広島広域公園陸上競技場・ホットスタッフフィールド広島で行われる。
織田幹雄は日本の陸上競技の黎明期に活躍し、1928年のアムステルダムオリンピックの男子三段跳で日本にとってのみならず、アジアに初めて金メダルをもたらす歴史的な一歩をスポーツ史に刻んだ人物であり、織田記念陸上はその功績を称えて1967年に第1回大会が開催され、今年で60回目を数える。
織田幹雄を顕彰する大会とあって今回も男女の三段跳が日本グランプリシリーズにおけるグランプリ種目として実施されるが、国内男子三段跳では1986年に山下訓史(日本電気)により打ち立てられた17m15の日本記録が以降破られておらず、17mオーバーも、2021年9月に伊藤陸(近畿大工業高専→現スズキ)が17m00をマークして以降実現していない。
また最新の4月21日付けWAランキングでは安立雄斗(福岡大クラブ)の62位が最高位であるのに対し、中国の朱亜明が7位、呉瑞廷が17位に付けている他、インドのP・チスラバルが20位、韓国のユ ギュミンが28位などとなっており、また昨年の東京世界陸上でも朱亜明と粟文の中国勢が入賞には届かなかったものの決勝進出を果たすなど、世界を相手に台頭するアジア勢の中にあって、遅れを取る恰好となっている。
今大会にエントリーしている呉瑞廷は17m68、粟文が17m17の自己ベストを持つのに対し、共に自己ベストが16m70の安立と小田大雅(XSPO SEAGULLS)は少しでも差を埋めて行くためには、まず単発ではなくコンスタントに16m50オーバー辺りを記録する安定感が求められるだろう。
また、日本勢では2023年に16m38のU20日本記録をマークし、先日の日本学生個人選手権でその自己ベストを3年ぶりに更新する16m39で優勝を果たした宮尾真仁(東洋大)もエントリー、日程的にはタイトだが長かった記録停滞を打破したばかりでもあり、出場ならば再度の記録更新に期待をしたい。
女子は2023年に14m16の日本記録をマークした森本麻里子がブダペスト世界陸上に出場を果たすと、翌2024年にパリオリンピック、昨年も東京世界陸上に連続で出場を果たし、
森本と共にブダペスト世界陸上代表となった髙島真織子(クラフティア)も、パリオリンピック出場はならなかったが、昨年は13m94の自己ベストをマークし、東京世界陸上に代表として返り咲いた。
いずれも決勝進出を果たせなかったが、その宿願を果たすためには安定して14mオーバーを跳ぶ力を付ける必要がある。
今大会にエントリーをしている髙島は昨年自己ベストをマークした大会で、2.5mの追い風参考記録ながら14m25と森本の日本記録を上回るビッグジャンプを見せており、また2月に行われたアジア室内選手権に出場し13m46でスタートを切った今季も屋外シーズンに入り、4月19日に行われた記録会では13m64と13m50オーバーをマークしており、更にコンディションが上がり、風など気象条件に恵まれれば自身初の14mオーバーも可能なところまで来ている。
また2022年、森本に先立って13m50オーバーとなる13m81をマークした船田茜理(武庫川女子大→現ニコニコのり)は、昨年3年ぶりに自己記録を13m87に更新、スピードに乗ってストライドをぐいぐい伸ばす助走の切れが増しており、こちらも14mオーバーの期待を抱かせる。
織田記念で実施されるフィールド種目は男女の三段跳のほか、男女のやり投が実施種目となっており、男子は東京世界陸上代表の﨑山雄太(ヤマダホールディングス)と長沼元(スズキ)、代表にもう一歩及ばなかった若手の鈴木凜(九州共立大)らに80mオーバーのビッグスローを期待、女子は兵庫リレーカーニバルに続き、上田百寧(ゼンリン)、武本紗栄(オリコ)の東京世界陸上代表対決が実現、パリオリンピックでは10位となった上田が前回のリベンジを果たすのか、オレゴン世界陸上11位の武本が再び対決を制すのか注目されるとともに、前回果たせなかった60mオーバーにも期待をしたい。

トラック種目では男女のスプリントハードルが熱い。
男子の110mHにはブダペスト世界陸上で5位入賞の泉谷駿介(住友電工)、3月に行われた世界室内陸上選手権の60mHで決勝に進出し、6位入賞を果たした野本周成(愛媛競技力本部)、昨年の東京世界陸上代表を逃したあと、ワールドユニバーシティゲームズで金メダルを獲得、8月には13秒12と昨年の世界トップリストでも14位にランクされる好記録を叩き出した阿部竜希(順天堂大→エターナルホスピタリティグループ)がエントリーしており、パリオリンピック、東京世界陸上で共に5位入賞を果たしている村竹ラシッド(JAL)の出場はなくとも、世界レベルのレースとなることは必至の様相だ。
更には、この春に順天堂大に進学した、昨年のインターハイで2.2mの追い風参考ながら13秒18を叩き出している古賀ジェレミーも加わり、仮にこのタイムを再現できるようならば、アジア大会代表争いが更に激化しそうだ。
女子100mHにも昨年の東京世界陸上代表の福部真子(日本建設工業)、田中佑美(富士通)、中島ひとみ(長谷川体育施設)がエントリーしている他、昨年の東京世界陸上代表を目指し資格期限のぎりぎりまで参加標準記録の突破を目指した清山ちさと(いちご)、元日本記録保持者、東京オリンピック代表で今季に復活を期す青木益未(七十七銀行)、12秒94の自己記録を持つ大松由季(サンドリヨン)、昨年13秒切りを果たした本田怜(水戸信用金庫)、島野真生(渡辺パイプ)ら実力者たちがこの種目のグランプリ初戦から顔を揃えた。
世界室内陸上の60mHで準決勝に進出した福部、4月19日に行われた筑波大競技会で早くも12秒97を叩き出している田中佑美が半歩リードしていると思われるが、中国やオーストラリアからの招待選手も加われば、こうした選手たちも予選落ちとなりかねない厳しい争いが待ち受けている。
また、13秒29のU20日本記録を持つ石原南菜(白鷗大足利高)、石原に自身の持っていた13秒31のU20日本記録を更新された井上凪紗(滝川第二高→青山学院大)のこの種目の次世代を担う選手二人の力がどこまで通用するのかにも注目したい。
男子100mは、昨年高校2年生ながら10秒00をマークした清水空跳(星稜高)の欠場が明らかになっているが、地元広島出身の山縣亮太(セイコー)や昨年の日本選手権で3位に食い込んだ関口裕太(早稲田大)、10秒11の自己ベストを持つ鈴木涼太(スズキ)がエントリー、4月12日に行われたグランプリシリーズの出雲陸上では韓国の選手に優勝をさらわれており、この種目の日本勢の奮起を期待している。
男子3000m障害では日本記録保持者の三浦龍司(SUBARU)がペースメーカーを担う事が予定されており、青木涼真(Honda)、新家裕太郎(愛三工業)には8分18秒75、8分19秒54のそれぞれの持つ自己記録更新への期待が高まる。
また女子ではパリオリンピック代表の樺沢和佳奈と、今年の大阪国際女子マラソンで2時間19分57秒をマークし、アジア大会マラソン代表に内定している矢田みくに(エディオン)の対決が実現、パリオリンピック代表の後藤夢(ユニクロ)が出場する5000m、東京オリンピック代表の卜部蘭(積水化学)、東京世界陸上代表の木村友香(積水化学)が出場する1500mも楽しみだ。
また100mには昨年11秒33に自己ベストを伸ばし、11秒2台が見えてきている御家瀬緑(住友電工)、800mには2分0秒台が目前に迫る塩見綾乃(岩谷産業)といった注目選手が出場を予定している。
今大会は9月に開催される名古屋アジア競技会の代表選考参考競技会に指定されており、各種目の派遣設定記録をどれだけの選手が突破できるか、期待をしたい。
文/芝 笑翔
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