愛知・名古屋アジア大会代表を懸けた三日間の熱い闘い!第110回日本陸上競技選手権大会二日目の展望

第110回日本陸上競技選手権大会二日目のトラック競技の決勝種目は、男女の800m、男子1500m、女子400m、女子100mHに男女の100m。

女子800mは、塩見綾乃(岩谷産業)が大会初日の予選2組でアジア大会派遣設定記録の2分1秒67まであと0秒15に迫る2分1秒82を叩き出してトップタイム通過を果たした。ペースメーカーのいない日本選手権で自らレースを作りながら2周目も大きくペースを落とすことなく走り切った内容も素晴らしく、ここへ向けてしっかりと準備をしてきたことが窺えた。決勝もハイペースの展開が予想されるが、2周目で力を溜めながら、ラスト200mでもう一段ギアを切り替えることができるかが、4年ぶりの優勝とアジア大会代表内定に向けてのカギとなる。
1分59秒52の日本記録保持者、久保凛は予選3組に出場し2分3秒09で塩見に次ぐ全体2番手の通過となった。1周目の通過は58秒と塩見の60秒を上回りスタジアムにどよめきが起こったが、最後の直線に入ってからは好調時の伸びを欠いた。疲労骨折から復帰後3レース目だったが、完調までに至っていないように見受けられるか、決勝でここから立て直すことができるか、注目される。

男子800mでも2組で1着となった源裕貴(NTN)が1分45秒76と1分46秒28の代表派遣設定記録を上回る素晴らしいタイムで好調さを感じさせたが、2着の萬野七樹(関西大)も1分45秒94、3着の岡村颯太(鹿屋体育大)も1分46秒10とレベルの高いレースとなり、2着取りに力を使った分、決勝にどの程度余力を残せているかが気になるところ。
1分48秒72で3組1着となった田邉奨(中央大)、1分49秒06で2着となった山鹿快琉(育英大)は「効率よく」決勝進出を決めることが出来ており、優勝のチャンスが来ているのではないだろうか。

男子1500mも予選2組で本田桜二郎(早稲田大)が3分37秒53と決勝かと見紛うばかりの好タイムで1着、5着までが3分37秒台で、3分38秒30を記録した佐藤圭汰(NIKE)でさえ7着で6着までの決勝進出を阻まれるレベルの高さで決勝での3分36秒53の代表派遣設定記録の突破への期待を抱かせるに十分なレースとなったが、一方で予選1組では東京世界陸上代表の飯澤千翔(住友電工)が上手くレースをコントロールし3分41秒48で勝ち上がっており、こうした差が決勝でどのようなかたちで現れるのか、注目だ。

女子400mは東京世界陸上代表の松本奈菜子(東邦銀行)が予選から52秒41の好タイムを叩き出し、優位は動かない。
アジア大会に出場出来るかどうかは、来年の北京世界陸上へ向け、WAランキングでの出場にも大きく関わってくるため、予選からもう一段ギアを上げ、何としても51秒97の派遣設定記録の突破を果たしたいところだろう。

女子100mHでは準決勝1組で福部真子(日本建設工業)が12秒72で1着、青木益未(七十七銀行)が12秒79の自己ベストで2着、同2組では中島ひとみ(長谷川体育施設)が12秒77と軒並み好仕上がりを見せており、決勝では福部の持つ12秒69の更新も期待される。
アキレス腱に不安を抱える田中佑美(富士通)は準決勝1組で12秒88の3着に留まったが、決勝では今大会最後の一本に全てを懸けて臨んでくるだろう。

女子100mは準決勝1組で11秒33の自己ベストタイを叩き出した御家瀬緑(住友電工)、同2組で11秒37の1着となった連覇を目指す井戸アビゲイル風果(東邦銀行)の動きが良く、決勝では11秒2台での決着もありそうだ。
準決勝では11秒46で2組2着に留まった君嶋愛梨沙(土木管理総合試験所)も決勝では巻き返してくるものと思われ、また予選、準決勝ともに11秒42をマークした三浦愛華(愛媛県競技力向上対策本部)も上位争いに加わってきそうだ。

男子100mは予選で小室歩久斗(中央大)が10秒07、準決勝では西岡尚輝(筑波大)が10秒09と学生が躍動、決勝では桐生祥秀(日本生命)の連覇を脅かす存在となりそうだ。
その桐生は予選で10秒09の1着、準決勝では多田修平(住友電工)の鋭いスタートダッシュにやや手こずったが10秒13で1着と悪くない内容で決勝に勝ち上がった。
北京世界陸上の出場権獲得へ向け、アジア大会で37秒台のタイムを出す必要があるリレー代表選考の参考レースでもあり、優勝者だけでなく、複数の選手が10秒0台を記録するようなハイレベルなレースとなることを期待したい。

跳躍競技の決勝は、男子棒高跳、女子走幅跳、女子走高跳の三種目。
男子棒高跳では5月の東日本実業団で5m66の自己記録をマークした柄澤智哉(東日本三菱自動車)、木南記念を5m60で制した江島雅紀(富士通)、関西実業団選手権で5m55を記録した石丸颯太(Glanz AC)の3人が5m55のアジア大会派遣設定記録を既にクリアしており、優勝すれば代表に内定する。
また、原口颯太(大阪経済大)も水戸国際で5m50をクリアして派遣設定記録に5cmまで迫っており、今大会で突破するだけの力は持っている。

女子走幅跳は6m53の派遣設定記録を突破した選手が出ていないが、日本記録保持者の秦澄美玲(住友電工)には過去の実績からみても、突破を果たして欲しいところ。
昨年、今年となかなか思うような跳躍ができず苦戦が続いているが、関西実業団選手権では追い風参考ながら6m54を記録しており、この跳躍で復調のきっかけを掴んでいるか、注目したい。
また、髙良彩花(JAL)も6m50の自己ベストがあり、昨年には追い風参考ながら6m52を記録と、派遣設定記録を上回る力は備わっている。

女子走高跳は昨年2月に室内大会で1m92を記録し東京世界陸上に出場した髙橋渚(センコー)が、今季はここまで1m85に留まっており、1m89の派遣設定記録をクリアする選手が出てきていないが、昨年森﨑優希(日本女子体育大)が1m85、今年に入って石岡柚季(日本女子体育大AC)が1m86をクリアと、国内の競技水準も上がり、1m85の自己記録を持つ津田シェリアイ(築地銀だこ)も含め、この高さに挑むことのできる選手は増えてきている。
競い合いの中で、1m89を越える跳躍を見せる選手が出てくるか、期待したい。

投擲競技の決勝は男女のハンマー投、男子やり投の三種目。
女子ハンマー投の派遣設定記録は69m72、この記録を上回る選手は出てきていないが、71m51の日本記録保持者、マッカーサー ジョイ アイリスが設定記録突破の筆頭候補だろう。
毎年一歩一歩着実に成長し、今季も3月に自己記録を66m95にまで伸ばしている村上来花(ゼンリン)は派遣設定記録にどこまで迫ってくるか。

男子ハンマー投も73m10の派遣設定記録を突破している選手はいないが、昨年の日本選手権で74m57のビッグスローを見せ、東京世界陸上にも出場した福田翔大(住友電工)、73m35の自己ベストを持ち、今季は5月のアジア投擲選手権を71m89で制し、二週間後の関西実業団選手権でも72m38で優勝と好調な中川達斗(山陽特殊製鋼)には突破を果たす実力がある。

男子やり投は﨑山雄太が4月の織田記念で81m78を投じ、80m45の派遣標準記録を突破、優勝すれば代表に内定する。
また鈴木凛(九州共立大)は昨年4月に自己ベストの80m68をマークし、東京世界陸上の代表争いに加わりながら、その後調子を落として出場が適わなかったが、今季は織田記念で79m48を記録、﨑山に続く2位に入って復調してきており、チャンスは十分あるだろう。

決勝種目以外では、泉谷駿介(住友電工)、野本周成(愛媛県競技力向上対策本部)、阿部竜希(エターナルホスピタリティグループ)、古賀ジェレミー(順天堂大)らが既に内定している村竹ラシッド(JAL)に続く残り1つのアジア大会代表枠を争う男子110mHの予選と準決勝、東京世界陸上6位でアジア大会代表に内定している中島佑気ジョセフが登場する男子400m予選のほか、男女の200m、400mHの予選、女子1500m予選が行われる。

第110回日本陸上選手権の注目選手③
男子400mH 後藤大樹(洛南高)

大会二日目には男子400mHの予選、準決勝が行われる。
この種目ではアジア大会代表を争う、東京オリンピック代表で、今シーズンは48秒35の自己記録を叩き出し、近年の不調から復活を果たした黒川和樹(住友電工)や、47秒99の自己ベストを持つパリオリンピック代表の豊田兼(トヨタ自動車)らに注目が集まるが、アジア大会の代表争いとは趣が異なるが、高校2年生の後藤大樹(洛南高)のエントリーにも注目している。
後藤は昨年の暑熱対策でタイムレースとなったインターハイを、1年生ながら50秒を切る49秒84の大会新記録で制し、今年も5月の木南記念で49秒34をマークと一段と成長、その2週間後には代表に選出されたU20アジア選手権で、後続に大差を付ける圧勝でフィニッシュタイムは49秒25とまたも自己記録を更新、1996年に為末大が記録した49秒09の高校記録も迫ってきている。
今や走る度に記録を更新と言っても良いような成長を見せており、アジア大会代表の懸る真剣勝負の舞台で実力者とレースをともにすることで、同世代の選手たちとの勝負とはまた違った力を発揮し、為末越えや、その先にある48秒台さえもあるのではないかと夢が膨らむ。
来週行われるインターハイ近畿予選との兼ね合いもあるが、出場なら伸び盛りの後藤がどのような結果を残すのか、楽しみだ。

文/芝 笑翔

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