8月5日、U20世界陸上開幕!男子400mH代表、後藤大樹のSeventeen’s map

6月13日、名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムに詰めかけた多くの陸上ファンは、今どきには珍しく頭髪を短く刈り込んだ17歳の少年が、途轍もない能力を解放し始める瞬間を目撃した。

その少年は、昨年の全国高校総体の400mHで49秒84の大会記録を叩き出して優勝を果たし、日本陸上界の将来を担うホープと目される存在となっていた。
今年に入ってからも、日本グランプリシリーズの木南記念では49秒34をマークし、香港で行われたU20アジア選手権でも49秒25で金メダルを獲得と立て続けに自己記録を更新。初出場となる日本選手権では、世界選手権で2度銅メダルを獲得した為末大の持つ49秒09の日本高校記録を更新できるか、更にそれを上回り48秒台に届くかが注目された。

日本選手権400mH予選2組。
パリオリンピック代表の豊田兼(トヨタ自動車)、東京オリンピック代表の山内大夢(東邦銀行)ら錚々たる顔ぶれが揃ったレースは、ブダペスト世界陸上代表の児玉悠作(ノジマ)が先行したが、9台目のハードルで並びかけると10台目で抜け出し、追いすがる豊田、山内を突き放してフィニッシュ。
公式タイムは48秒31、為末の高校記録を大幅に上回る高校生として初の48秒台、U18、U20日本記録、そしてU18世界最高記録と場内アナウンスで告げられると、会場には地鳴りのような歓声と拍手が沸き起こった。
レース後のインタビューでは、今まで見たことのない大勢の観客の中で大きな声援も聞こえ、ここで(記録を)出すしかないと思っていたが、実際のタイムを見て信じられない気持ちが大きい。ここまで来たらアジア大会代表内定を目指し、プロの「大人の」選手たちに食らい付いていきたいと、17歳の少年らしさをのぞかせながらも、はっきりと優勝でのアジア大会代表内定を宣言した。

誰もが躍進に目を瞠り、この勢いでどこまで伸びていくのだろうかと大きな期待を抱かせる結果を出して見せたその翌日、6月14日の決勝で、私たちはその期待を大きく上回る衝撃のレースを目の当たりにすることになる。
その決勝のレースでは、東京オリンピック代表で、オレゴン世界陸上では準決勝に進出、近年は故障に悩まされていたが今季に入って5月の木南記念で48秒35の自己ベストを叩き出すなど復調していた黒川和樹(住友電工)が「大人の選手」の一人としてプライドを見せ、序盤から猛烈なペースで突っ込んでいったが、前日の予選同様に惑わされることなく自身のレースプランに集中し、9台目のハードルを越えた直後に黒川に並びかけると以降は差を拡げる一方となってフィニッシュラインに飛び込むと、示されたタイムは前日に樹立したU18世界最高記録をまたしても大きく上回る48秒09。想像を絶する結末にパロマ瑞穂スタジアムは前日を上回る怒涛のような歓声に包まれた。

優勝を果たしアジア大会代表をも勝ち取り、インタビューでは、オリンピアンや世界選手権で活躍した選手がたくさんいるが、高校生らしく楽しもうと挑んだ。為末さんのように高校記録を出してもシニアの世代で世界のメダルを獲得するような活躍をして、皆さんから愛される選手を目指したいと、ここでも高校生ならではの等身大で微笑ましい受け応えをしていたが、フィニッシュ直後には黒川、インタビュー後には東京世界陸上代表の井之上駿太(富士通)から、「お前は大した奴だ」という感じで坊主頭を撫で回され、健闘を称えられていたところを見ると、すでにトップ選手の間では弟分の「愛されキャラ」となりつつあるのかもしれない。

全国高校総体の陸上競技が最終日を迎える8月5日、2022年の世界陸上が行われたアメリカ・オレゴン州のユージーンでU20世界選手権が始まる。

日本選手権の400mHで48秒09を叩き出したその17歳の選手、後藤大樹(洛南高)も代表に選ばれ、U18世界最高記録保持者として出場する。

日本選手権後の7月には京都選手権で200mに出場。専門外の種目ながらサニブラウン アブデル ハキーム(東レ)の20秒34、桐生祥秀(日本生命)に次ぐ高校歴代3位の20秒43の好タイムをマークし、もともと洛南高校では4×100mリレーのメンバーを担うスプリント力にも更に磨きがかかり、大舞台での47秒台突入も期待される。
よほどのアクシデントがない限り、決勝進出は間違いないだろう。
決勝のレース後、ユージーンの太陽は、後藤の心の地図の上にどのような景色を照らし出すのだろうか。

文/芝 笑翔

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